地方在住PMの人脈作りとコミュニティ活用術、情報孤立を防ぐには
- 地方在住PMは同業者と偶発的に雑談する機会が都市部より体感で少なく、情報孤立が転職判断の遅れにつながりやすい。
- 地元の商工会議所・自治体DX協議会・オンラインコミュニティを目的別に併用すると、公募前の温度感と全国の同業者の本音を両方カバーできる。
- 名刺交換で終わらせず、探している案件を一文で言語化して伝える紹介依頼の作法が、人脈を仕事につなげる分かれ目になる。
「地方に住んでいると、正直、情報が入ってこないんですよね。同業のPMと雑談する機会自体がないので」
これは以前、長野県内在住のPMの方からご相談を受けたときに聞いた言葉です。結論から言うと、地方在住PMの人脈作りは、地元のリアルな場とオンラインの全国コミュニティを目的別に使い分けることで、情報孤立はかなりの部分まで解消できると僕は考えています。今日はその具体的なやり方と、僕がこれまで見てきた失敗パターン、そして実際に案件につながった動き方をあわせてお話しします。
1. 地方在住PMが陥る「情報の孤立」の正体
都市部でPMをしていると、勉強会の帰りの飲み会や、オフィス近くのコワーキングスペースでの立ち話で、案件の相場感や転職市場の温度感が自然に耳に入ってきます。地方ではこの「自然に耳に入る」機会自体が構造的に少ない、というのが僕の体感値です。同業のPMが近所に住んでいる確率が単純に低いからです。
この孤立が厄介なのは、情報がないこと自体よりも、「情報がないことに気づきにくい」点にあります。先ほどの長野県在住の方も、転職を考え始めてから半年ほど一人で求人サイトを眺めるだけの状態が続いていました。同業者に一度話を聞いていれば数週間で判断できたはずの内容に、半年かけていたわけです。似たケースはUターンでPMを続けている方からも聞きます。都市部で築いた人脈は転職後も残っていますが、地元での新しい人脈がゼロからのスタートになるため、地元企業の案件事情については都市部時代より情報が薄くなった、と話していました。地方在住PMにとっての人脈作りは、単なる交流ではなく「意思決定のスピードを上げるインフラ」だと捉えるとしっくりくると思います。
2. 地元で人脈を作る場所を具体的に挙げる
地元の人脈作りというと漠然としがちですが、実際に情報が集まりやすい場は限られています。僕が地方PMクエストの取材や相談会を通じて見てきた範囲では、次の3つが機能しやすい傾向にあります。
| チャネル | 得られる情報の傾向 | 参加のハードル |
|---|---|---|
| 商工会議所・地域IT勉強会 | 地場企業の生の課題感、DX予算の付き方 | 低い(オープン参加が多い) |
| 自治体DX推進協議会 | 自治体案件の発注動向、公募前の温度感 | 中(民間枠の公募や紹介が必要な場合あり) |
| 地方大学発ベンチャーのイベント | 若手エンジニアとの接点、採用相場 | 低〜中(学内イベントの外部公開回に限る) |
ある地方自治体のDX推進協議会に僕が同席させていただいたときは、公募が出る2〜3か月前の段階で、担当課がどんな課題を抱えているかが会話の中で自然に共有されていました。求人サイトに出る頃にはすでに社内候補が決まっているケースも多いので、この「公募前の温度感」を掴めるかどうかは、地方PMにとって案件獲得の実務上かなり大きな差になると感じています。商工会議所主催の勉強会でも同様で、発注前の企業担当者が「実はこういうことで困っていて」と雑談ベースで漏らす情報のほうが、公式な発注情報より数か月早いことが珍しくありません。
一方で、参加すること自体が目的化してしまう失敗もよく見かけます。以前、月1回の地域IT勉強会に半年間欠かさず参加していたという方に話を聞いたところ、得られた情報は「顔なじみが増えた」程度で、案件相談には一度も発展していませんでした。原因は後述しますが、参加回数と得られる成果は必ずしも比例しない、ということはあらかじめ知っておくと良いと思います。なお、地元の場に最初の一歩を踏み出すなら、いきなり大きな協議会を狙うより、商工会議所の無料勉強会など参加ハードルの低い場から慣らしていくのが現実的だと思います。
3. オンラインで全国のPMとつながる方法
地元だけでは同業PMとの技術的な相談相手が見つかりにくいのも事実です。ここはオンラインで補うのが現実的だと考えています。具体的には、PM向けのSlackコミュニティ、X(旧Twitter)でのPM界隈のやり取り、オンライン開催の勉強会の3つです。
僕らが地方PMクエスト経由で開催している月1回のオンライン相談会は、毎回20〜30名程度の参加があり、そのうち地方在住の方が体感で半数を超える回も珍しくありません(地方PMクエスト主催のオンライン相談会における参加者傾向、あくまで僕の観測範囲での体感値です)。同じ規模の都市部限定の勉強会と比べると、参加者の居住地の分布はかなり広がる印象があり、これは会場に足を運ぶ必要がないオンライン特有の利点だと思います。この場で交わされるのは求人票には出てこない「実際の稼働感」や「リモート比率の実態」といった話で、都市部・地方を問わず同じ悩みを持つ人がいると分かるだけでも孤立感はかなり和らぐようです。
オンラインで人脈を広げる実務手順としては、いきなり発言せず1〜2週間ほど過去ログを読んで場の空気を掴む(所要時間の目安は1日15分程度)→次に自分の得意領域で誰かの質問に答える形で発言デビューする→その流れで自分の状況を共有する、という順番が心理的にも入りやすいと感じています。最初から「案件ください」と切り出すより、まず貢献してから自分の話をするほうが、その後のつながりが続きやすいです。
ただしオンラインだけに頼ると、案件の「肌感」までは掴みにくいという弱点もあります。地場企業の予算感や意思決定のスピードは、地元の関係者との会話でしか出てこないことが多いからです。オンラインは同業者の本音、地元は地場の実情、という役割分担で捉えるのがバランスの良い使い方だと思います。
4. 人脈を「仕事につなげる」ための具体的な動き方
人脈を作っても案件につながらない、という相談もよく受けます。原因の多くは、名刺交換や参加だけで終わっていて、自分が今何を探しているかを言語化して伝えていない点にあります。
以前、地元の勉強会に何度も顔を出していたのに紹介が一件も来ない、という方がいました。話を聞くと、自己紹介はいつも「PMをやっています、よろしくお願いします」で終わっていました。これでは相手も紹介のしようがありません。僕がお伝えしたのは次の3ステップです。
- 今探している案件の条件(業種・稼働形態・時期)を一文で言えるようにしておく(所要時間の目安は15分程度で言語化できます)
- 相手の話を先に聞き、自分が力になれそうな情報や人を先に紹介する(ギブファースト)
- その場で終わらせず、1〜2週間以内に軽い近況報告を送って接点を維持する
この方は3ステップを実践し始めてから2か月ほどで、勉強会つながりの紹介から地元企業のDX案件相談につながりました。同じ勉強会に参加していても、条件を言語化して伝えていた方と、自己紹介だけで終わっていた方とでは、半年間での案件相談の件数に明確な差が出ていたのが印象的でした。人脈作りは「参加した回数」ではなく「探していることを何回言語化して伝えたか」で成果が変わる、というのが僕の実感です。
5. 孤立しやすい時期とそのタイミングでの対処
孤立は常に一定ではなく、特定のタイミングで強まる傾向があります。僕が相談を受けてきた中でよく出てくるのは、転職直後・フリーランス独立直後・Uターンや二拠点生活を始めた直後の3つの時期です。いずれも「新しい環境に慣れるだけで手一杯になり、外に情報を取りに行く余力がなくなる」という共通点があります。
対処法として有効だったのは、こうした変化のタイミングに合わせて、あらかじめ月1回の相談会やオフ会に予定として組み込んでおくことです。忙しくなってから人脈作りを始めようとすると後回しになりがちですが、先に予定を確保しておけば、環境が変わった直後でも情報の接点を切らさずに済みます。実際、独立直後の3か月間だけ意識的にオンライン相談会への参加を月2回に増やしていたという方は、独立後の案件が途切れる不安をかなり早い段階で解消できた、と話していました。逆に、転職直後に「まず仕事に慣れてから」と人脈作りを止めてしまった方は、半年後に相談相手がおらず一人で悩みを抱え込んでいた、というケースもあります。落ち着いてから再開しようとしても、一度切れた接点を立て直すのは想像以上に労力がかかります。
6. 人脈作りでよくある失敗パターンと対処法
ここまでの内容と重なる部分もありますが、僕が実際に見てきた失敗を整理すると、大きく3つのパターンに集約されます。
- 参加だけで満足してしまう失敗:先述の半年参加しても成果ゼロだった方のように、名刺交換や自己紹介だけで終わり、自分が探している条件を言語化していないケースです。対処法は、次回の参加前に「今日は誰にどんな条件を伝えるか」を1行メモしておくことです。数分の準備をするかどうかで、その場での会話の密度がかなり変わります。
- オンラインか地元かどちらかに偏る失敗:オンラインだけだと地場の肌感が掴めず、地元だけだと技術的な相談相手が不足します。対処法は、月に1回はオンライン、月に1回は地元、というように最低ラインを固定してしまうことです。どちらかに偏っている自覚がある方ほど、固定ルール化した途端に情報の幅が広がったと話してくれます。
- 接点を作った後に放置してしまう失敗:一度話しただけで満足し、その後の近況報告を送らないケースです。半年後に思い出して連絡しても、相手の記憶はかなり薄れています。対処法は、名刺交換や紹介の直後にカレンダーへ「2週間後に近況報告」と予定を入れてしまうことです。この一手間だけで、次に相談したいときの返信率が体感でかなり変わると感じています。
この3つはどれも、特別なスキルではなく仕組み化で防げる失敗だという点が共通しています。人脈作りが苦手だと感じている方の多くは、性格ではなく「準備と維持の仕組みがないだけ」というのが僕の見立てです。
(結論)
地方在住PMの人脈作りは、地元のリアルな場で公募前の温度感を掴み、オンラインコミュニティで同業者の本音に触れ、その両方で得た接点を「探していることの言語化」でつなげていく、という積み重ねだと僕は考えています。特別な才覚がいる話ではなく、どこに顔を出し、何を伝え、いつ接点を維持するかという行動の設計の問題です。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 地方在住だと人脈作りは都市部より不利ですか?
機会の絶対数は都市部より少ないというのが僕の体感値です。ただし地元の商工会議所や自治体のDX関連の集まり、全国規模のオンラインコミュニティを組み合わせれば、情報量そのものは十分に補えます。不利なのは『何もしなければ機会が向こうから来ない』という点で、能動的に動くかどうかが差になります。
Q. オンラインコミュニティと地元の集まり、どちらを優先すべきですか?
両方を目的別に使い分けるのがおすすめです。地元の集まりは自治体案件や地場企業の実情など、検索しても出てこない生の情報が強みです。オンラインは同業PMとの技術的な相談や転職の温度感を知るのに向いています。どちらか一方に絞ると得られる情報が偏りやすくなります。
Q. 人脈を作っても仕事につながらないのですが、何が足りませんか?
名刺交換や参加だけで終わっている可能性があります。僕が見てきた限り、案件につながる人は『今こういう案件を探しています』と具体的に言語化して伝えている方がほとんどです。漠然とした自己紹介だけでは、相手も紹介のしようがない、というのが実情です。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。