地方在住PMの契約形態選び|正社員と業務委託どちらが得か
- 地方在住PMの業務委託の受取額は税・社保・税理士費用を引くと正社員600万〜750万円台と実質近づく体感値がある
- 地方は対応可能な税理士・社労士の絶対数が少なく、確定申告サポートの確保が契約形態選びの実務的な分岐点になる
- 契約形態の切替は住民票所在地の国保・年金の切替タイミング次第で手取りが数十万円単位でずれる目安がある
「正社員のままでいいのか、業務委託に切り替えたほうが得なのか、正直よく分からないんです」
先日、地方在住で働くPMの方からこう相談されました。地方在住PMクエストの取材や相談の中で、この「正社員か業務委託か」という悩みは本当によく出てきます。個人的には、どちらが正解ということはなく、契約形態ごとに何が変わるのかを分解して比べることが一番の近道だと考えています。この記事では、正社員PMと業務委託PMそれぞれの実態、地方在住だからこそ生じやすい落とし穴、実際に僕が見聞きした3つのケース、そして年収を比較するときの目安値を、独自ガイドの体感値としてお伝えします。
0. 結論から言うと
結論を先に言うと、僕は「契約形態を変える前に、実質の手取りと地方特有のコストを同じ土台で比較すること」が最も重要だと考えています。業務委託の契約金額は正社員の年収より大きく見えることが多いのですが、そこから社会保険料・税金・税理士費用などを自分で払う分を引くと、実質の手取りは正社員の年収目安(僕の独自ガイドでは600万〜750万円程度)にかなり近づくケースが多いというのが体感値です。さらに地方在住の場合は、税理士や社労士のサポートを受けにくい・国民健康保険料が住む市町村によって変わるといった、都市部ではあまり意識しなくてよい要素も絡んできます。以下、順番に見ていきましょう。
1. 正社員PMとして働く場合の実態
正社員PMの最大のメリットは、社会保険・雇用保険・年金の手続きを会社が代行してくれる点だと考えています。地方在住PMの場合、これは想像以上に大きな安心材料になります。というのも、地方は都市部に比べて相談できる士業(税理士・社労士)の絶対数が少なく、何か手続きで困ったときに「近くに頼れる人がいない」という状況が起きやすいからです。正社員であれば、その手続きの大半を会社の総務・労務担当が処理してくれるため、PMとしての本業に集中しやすいというのが僕の体感です。
一方でデメリットとしては、昇給・昇格のペースが会社の制度に依存する点が挙げられます。地方拠点のフルリモートPM求人は増えてきていますが、評価制度自体は都市部本社の基準で運用されているケースが多く、地方在住であることが評価に直接影響しないとしても、評価のタイミングやスピードに違和感を持つ方は少なくありません。また、正社員は原則として一つの会社の業務にコミットする必要があるため、複数の案件を並行して経験値を積みたいという方には窮屈に感じられることもあります。年収の目安値としては、地方拠点・フルリモート可のPM求人で僕が観測している範囲だと600万〜750万円程度が中心的なレンジで、経験年数やマネジメント範囲によって上下すると考えています。
2. 業務委託・フリーランスPMとして働く場合の実態
業務委託PMのメリットは、契約単価そのものが正社員の月収換算より高く出やすい点です。僕の観測範囲では、地方在住で複数社と契約するPMの月額単価は80万〜120万円程度(週3〜4日稼働想定)というレンジがよく見られます。これを単純に12倍すると年960万〜1440万円になり、正社員より一見大きく見えるのは事実です。
ただし、ここで必ず引かなければならないコストがあります。国民健康保険・国民年金の全額自己負担、所得税・住民税・事業税、確定申告の手間、そして税理士に依頼する場合はその費用です。これらを引いた「実質の手取り」で比較すると、業務委託の年960万円と正社員の年650万円の差は、見た目の300万円ほどではなく、100万〜150万円程度に縮まることが多いというのが僕の体感値です。この「何を引いた後の数字か」を明示しないまま契約金額だけを比較すると、切り替え後に「思ったより残らない」と感じるケースが多いので注意が必要です。加えて業務委託は契約が更新されない可能性という収入の不安定さも抱えることになるため、単価だけでなく契約の継続性も含めて比較材料にすべきだと僕は考えています。
3. ケース比較:3人の地方在住PMの実例
抽象的な比較だけだと実感しづらいので、僕が相談を受けた中でよくあるパターンを3つに整理してみます。いずれも複数の相談を踏まえた典型例であり、特定個人の経歴ではありません。
ケースA:正社員継続を選んだ40代PM地方拠点のIT企業でフルリモートPMとして年収680万円。業務委託への切り替えも検討したものの、家族の医療保険を会社の健康保険組合に依存していたことと、地元に対応可能な税理士が見つからなかったことから正社員継続を選択。安定を優先した典型例です。
ケースB:業務委託に切り替えた30代PM正社員時代の年収620万円から、業務委託で2社と契約し月額単価合計100万円(年1200万円グロス)に。オンライン対応の税理士と契約し、確定申告と社会保険の手続きを外部化。実質の手取りは年800万円前後になり、正社員時代より150万〜180万円程度上振れした体感値だったとのことです。
ケースC:切替タイミングで苦労した20代PM退職日と業務委託契約の開始日の間に3週間の空白期間ができ、その間の国民健康保険への切替を後回しにしてしまい、結果的に無保険期間が発生。後から任意継続保険料をまとめて請求され、想定外の出費に苦しんだという相談を受けたことがあります。この3例からも分かるように、契約形態そのものの優劣よりも、家族構成・地域のサポート体制・切替の準備度合いによって満足度が大きく変わるというのが僕の実感です。
4. 地方在住PMだからこそ注意したい落とし穴とよくある失敗
地方在住PMが契約形態を切り替えるときに特有の落とし穴がいくつかあります。一つ目は、対応可能な税理士・社労士の絶対数が少ないことです。都市部であれば近隣に個人事業主対応に慣れた事務所が複数あり、比較検討する余裕がありますが、地方だと選択肢が限られ、結果的に対応が遅い事務所や割高な事務所と契約してしまう失敗をよく耳にします。対処法としては、居住地に縛られずオンライン対応の税理士事務所を2〜3件比較することをお勧めします。
二つ目は、国民健康保険料が住む市町村によって変わるという事実を見落とすことです。同じ所得でも、居住する自治体の算定方式によって保険料が変わるため、切り替え前のシミュレーションを自分の居住地の条件で行わないと、想定より負担が重くなることがあります。対処法は、自治体のウェブサイトで簡易計算をしてから判断することです。三つ目は、退職と国保・国民年金の切替タイミングのずれです。ケースCのように退職日と契約開始日の間に空白期間ができてしまい、無保険状態になったり、任意継続の手続きを忘れて後から余計な費用がかかったりする失敗もよく見かけます。これらはいずれも「知らなかった」で済ませてしまうと後から響いてくるポイントなので、切り替え前に一つずつ確認しておくことをお勧めします。
5. 年収・実収入の比較目安(何と比べているかを明確に)
ここで改めて、比較の土台を整理しておきます。僕がこの記事で使っている数字は、地方拠点・フルリモート可のPM求人と、地方在住PMのフリーランス案件を独自に観測した範囲の目安値であり、公的統計ではありません。比較する際は「グロスの契約金額」と「実質の手取り」を分けて考えることが大切です。
| 項目 | 正社員PM(目安) | 業務委託PM(目安) |
|---|---|---|
| 年収・年間契約額 | 600万〜750万円 | 960万〜1440万円(グロス) |
| 社会保険料 | 会社と折半 | 全額自己負担(国保・国民年金) |
| 確定申告・税理士費用 | 不要(会社が年末調整) | 必要(税理士費用は目安で年10万〜30万円) |
| 実質手取りの目安差 | 基準 | 正社員比で+100万〜180万円程度に縮まる体感値 |
正社員の年収600万〜750万円は、社会保険料・税金を引く前の会社支給額であり、業務委託の月80万〜120万円は税金・社会保険料を引く前のグロス金額です。両者を同じ土台(実質手取り)で揃えると、差は縮まるというのが繰り返しになりますが最も重要なポイントです。また、業務委託は稼働日数を自分でコントロールできる分、週5日フルコミットすれば単価はさらに上振れする余地がありますが、その分体力的な負荷も上がるため、単価だけでなく稼働時間とのバランスで判断することを僕はお勧めしています。
6. 今日からできる実務チェックリスト(所要時間つき)
契約形態を検討する際、今日から手を動かせることを整理しておきます。
- 現在の契約書・雇用契約書を読み直し、副業規定や競業避止義務の条項を確認する(所要時間:15分)
- 居住している市町村の国民健康保険料の算定方法を自治体のウェブサイトで確認し、現在の所得を当てはめて簡易シミュレーションをする(所要時間:30分)
- オンライン対応可能な税理士事務所を2〜3件リストアップし、初回相談の可否と費用感を問い合わせる(所要時間:40分)
- 業務委託契約を検討している場合は、契約書の業務内容が「偽装請負」に該当しないか(指揮命令関係が実質的に雇用と同じになっていないか)を確認する(所要時間:20分)
- 退職を決める前に、退職日・保険の切替日・契約開始日の3つの日付を並べて、空白期間が発生しないか一度紙に書いて確認する(所要時間:15分)
合計で2時間程度あれば、この5つに着手できます。切り替え判断の材料はこれでかなり揃うはずですし、少なくとも「知らなかった」による失敗は防げると考えています。
(結論)
皆さんいかがでしたでしょうか。正社員か業務委託かという問いに、絶対的な正解はないと僕は考えています。ただ、契約金額の見た目だけで判断せず、実質の手取りと地方特有のコスト(税理士・社労士の少なさ、国保の地域差、切替タイミング)を同じ土台で比較することで、後悔の少ない選択に近づけるはずです。個人的には、まずは今日紹介したチェックリストのうち一つだけでも手をつけてみることをお勧めします。では今日もがんばりましょう。
よくある質問
Q. 地方在住PMは正社員より業務委託の方が年収が高いですか?
契約金額の見た目だけなら業務委託が高く出やすいですが、社会保険料や税金、税理士費用を自己負担する分を引くと、実質の手取りは正社員の年収目安(600万〜750万円程度)に近づくケースが多いというのが僕の体感値です。表面の金額だけで比較せず、何を引いた後の数字かを必ず確認する必要があります。
Q. 地方には業務委託PMをサポートできる税理士は少ないのでしょうか?
僕の観測範囲では、地方は都市部に比べて個人事業主・フリーランス対応に慣れた税理士や社労士の絶対数が少ない傾向があります。ただしオンライン対応の事務所も増えており、居住地に縛られず契約できる時代になってきているので、探し方次第で解消できる問題だと考えています。
Q. 正社員から業務委託に切り替えるタイミングで気をつけることは?
最も気をつけたいのは、国民健康保険・国民年金への切替タイミングと、退職前に済ませておくべき手続きの順番です。切替が数週間ずれるだけで保険が無保険期間になったり、翌年の税負担が想定と変わったりするため、退職日を決める前に一度シミュレーションしておくことをお勧めします。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。