地方企業のDX案件、選ぶ前に見るべき点
- 地方企業のDX案件は、予算の確保のされ方によってプロジェクトの持続性が大きく変わる。
- IT部門の有無より、担当者の当事者意識の高さの方が案件の成否を左右することが多い。
- 単発案件と継続案件はそれぞれ利点が異なり、自分のキャリア戦略に応じて選ぶべきである。
「案件が始まって3ヶ月で予算が凍結されました」——地方DX案件に参画したPMから、こうした話を聞くことは珍しくありません。すべての地方DX案件が同じ持続性を持っているわけではないのです。
皆さま、DX案件に参画するとき、業務内容や報酬条件以外に何を確認していますか。率直に言うと、案件の持続性を見極める視点を持たないまま参画すると、途中で案件そのものが消えてしまうリスクがあります。
0. なぜ案件の「持続性」を見る必要があるのか
地方DX案件は、首都圏の大企業のように長期の予算計画に基づいて動いているとは限りません。中小企業が中心である以上、経営者の一存や単年度の予算判断でプロジェクトの継続・中止が決まることが少なくありません。ここが今回の隠れた主役です。案件に参画する前に、この持続性を見極める視点を持っておくことが、キャリア形成において重要になります。
1. 予算の確保のされ方を確認する
最初に確認すべきは、予算がどのように確保されているかです。経営者の即決による予算なのか、正式な稟議プロセスを経た予算なのかで、プロジェクトの安定性は大きく変わります。即決予算は決定こそ速いものの、経営者の気が変わればあっさり凍結されるリスクがあります。一方、正式な稟議を経た予算は決定に時間がかかる分、一度動き出すと途中で止まりにくい傾向があります。
本物の持続性のある案件は、思っているよりずっと地味な確認作業から見えてきます。参画前の面談で「この予算はどのプロセスで確保されたものですか」と率直に質問することをお勧めします。
2. IT部門の有無より重要なこと
IT部門がない企業のDX案件は避けるべき、と考える方もいますが、僕はそうとは限らないと考えています。むしろ重要なのは、担当者や経営者がDXにどれだけ当事者意識を持っているかです。IT部門がなくても、経営者自身が強くコミットしている企業では、意思決定が速く、プロジェクトが円滑に進むことがあります。逆にIT部門があっても、担当者が「やらされ仕事」として関わっているだけの企業では、プロジェクトは停滞しがちです。
2-1. 当事者意識を見極める質問
面談の場で「このDXが実現したら、どんな景色を見たいですか」と聞いてみると、担当者や経営者の当事者意識の度合いが見えやすくなります。具体的な景色を語れる相手は、プロジェクトへのコミットメントが強い傾向があります。
2-2. 危険信号となる兆候
「上から言われたのでとりあえずやっています」「同業他社もやっているので」といった説明しか出てこない場合は、注意が必要です。目的意識が薄いプロジェクトは、途中で優先順位が下がり、予算が他に回されるリスクが高まります。
3. 単発案件と継続案件、どちらを選ぶか
地方DX案件には、単発のシステム導入案件と、継続的に業務改善を伴走する案件があります。継続案件はキャリアとして実績を積み上げやすい一方、単発案件は幅広い業界の経験を短期間で積める利点があります。僕の面談での体感値では、PM経験が浅い方はまず単発案件で経験の幅を広げ、その後に継続案件で深い実績を積む、という順番が現実的だと感じています。
4. 案件を選ぶ前にできるチェック
実務パートとして、案件参画前にできるチェックリストを紹介します。まず、予算の確保プロセスを面談で質問してください。次に、担当者や経営者の当事者意識を、具体的な質問で確かめてください。最後に、可能であれば過去にその企業で行われたIT関連の取り組みの成否を、業界紙や地元ニュースで調べてみてください。所要時間の目安は30分から1時間です。
5. 契約形態による見え方の違い
案件の持続性は、契約形態によっても見え方が変わります。業務委託契約であれば、契約更新の判断が数ヶ月単位で行われることが多く、案件の継続性を早い段階で察知しやすい面があります。一方、正社員雇用であれば、たとえ担当プロジェクトが中断されても他の業務にアサインされる可能性が高く、収入面でのリスクは相対的に低くなります。
5-1. 業務委託で確認すべきこと
業務委託で参画する場合は、契約更新の判断基準や、更新の可否をいつ頃通知してもらえるのかを、契約前に明確にしておくことが重要です。曖昧なまま契約すると、更新の見通しが立たないまま不安な状態が続くことになります。
5-2. 正社員雇用で確認すべきこと
正社員として参画する場合は、担当プロジェクトが仮に中止になった場合、社内でどのような異動やアサインの選択肢があるのかを事前に確認しておくと安心です。DX専門の部署が独立して存在するのか、他部署との兼務なのかによっても、この点の見通しは変わってきます。
6. 面談で使える具体的な質問リスト
ここまでの内容を踏まえ、実際の面談で使える質問例をいくつか紹介します。「このプロジェクトの予算は、単年度予算ですか、それとも複数年度にわたる計画の一部ですか」「これまでに社内で類似のIT投資を行った実績はありますか、その際の成否はどうでしたか」「このプロジェクトが仮に中断した場合、私はどのような業務にアサインされる想定ですか」。これらの質問は、案件の持続性を具体的に見極めるために有効です。
僕の面談での体感値ですが、こうした質問に対して具体的かつ誠実に答えてくれる企業ほど、実際のプロジェクトも安定して進んでいる傾向があります。逆に、質問をはぐらかしたり、抽象的な回答しか返ってこない企業には、慎重な姿勢で臨むことをお勧めします。
6-1. 質問への回答の質を見る
回答の中身そのものだけでなく、質問に対してどれだけ具体的に、誠実に向き合ってくれるかという姿勢も、企業を見極める重要な材料になります。
6-2. 複数の担当者に同じ質問をしてみる
可能であれば、経営者と現場責任者など、複数の立場の方に同じ質問を投げかけてみてください。回答に食い違いがある場合、それ自体がプロジェクトの持続性に関する重要な情報になります。
7. 見極めに時間をかけすぎないことも大事
ここまで見極めの重要性を強調してきましたが、一点だけ留保を加えておきます。あまりに慎重になりすぎて、良い案件を逃してしまうケースも見てきました。完璧な確証を得てから動こうとすると、地方DXのようにスピード感のある意思決定が求められる市場では、機会を逃すリスクの方が大きくなることがあります。見極めの視点を持ちながらも、ある程度の不確実性は受け入れて踏み出す判断力も同時に必要です。僕の面談での体感値になりますが、慎重すぎて何年も動けずにいる方より、ある程度の見切りをつけて一歩踏み出し、実際に経験を積みながら軌道修正していく方の方が、結果的にキャリアの選択肢を広げているように感じます。完璧な情報を待つのではなく、七割程度の確信が持てた時点で動き出す、というくらいの姿勢がちょうどよいのかもしれません。見極めのチェックリストは、完璧な答え合わせのためではなく、踏み出す際の不安を言語化して減らすための道具として使ってもらえればと思います。また、一度参画した案件が想定と違ったとしても、そこで得た経験や人脈は次の案件選びの精度を確実に高めてくれます。最初の一件で完璧な選択をしようと気負いすぎず、学びながら選球眼を磨いていく、というくらいの長期的な視点で臨むことをお勧めします。
(結論)持続性は、事前に見抜ける
誤解がないように申し上げると、すべての予兆を完璧に見抜くことはできません。ですが、予算の確保のされ方と担当者の当事者意識という2つの視点を持つだけで、案件の持続性はかなりの精度で事前に判断できます。地方DX案件に参画する前に、この2点を必ず確認する習慣をつけてください。
よくある質問
Q. DX案件を選ぶときに最初に確認すべきことは何ですか?
予算がどの部門の判断で確保されているかです。経営者の即決予算か、正式な稟議を経た予算かで、プロジェクトの安定性が大きく変わります。まずここを確認してください。
Q. IT部門がない企業のDX案件は避けるべきですか?
必ずしも避けるべきではありません。IT部門がなくても、経営者やキーパーソンがDXに強くコミットしている企業では、むしろ意思決定が速くプロジェクトが進みやすいケースもあります。担当者の当事者意識を確認することが重要です。
Q. 単発の案件と継続的な案件、どちらを選ぶべきですか?
キャリア形成の観点では、継続的に関われる案件の方が実績を積み上げやすい傾向があります。ただし単発案件は幅広い業界経験を積める利点もあり、自分のキャリア戦略に応じて選ぶのが望ましいです。
IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。